目次
はじめに
注文住宅を建てる際、断熱材は家の快適性や省エネ性能を大きく左右する大切な要素です。特に熊本市周辺のような気候特性を持つ地域では、適切な断熱材選びが、年間を通じて快適な暮らしを実現するのに大きな役割を果たします。
夏は高温多湿、冬は冷え込みが厳しい熊本では、外気温の影響をできるだけ受けない住まいをつくることが重要です。このコラムでは、断熱材の主要な種類とその特徴、そして家の断熱性能を示す指標である「UA値」について、熊本市周辺の気候を踏まえて詳しく解説します。
熊本市 の気候、月別の気象、平均気温(日本) – Weather Spark
1.熊本市周辺の気候の特徴と断熱の重要性
熊本市周辺は、九州地方のほぼ中央に位置し、内陸盆地的な気象条件を持つため、寒暖の差が大きいのが特徴です。
・夏場:非常に暑く、蒸し暑い日が続き、「肥後の夕なぎ」と呼ばれる無風状態になるなど、高温多湿です。熱帯夜も多くなります。
・冬場:非常に寒く、最低気温はしばしば氷点下になることもあります。
このような気候では、夏の暑さ対策(遮熱・断熱)と冬の寒さ対策(断熱)の両方がとても重要になります。
【夏の快適性:遮熱の重要性】
特に高温多湿な熊本の夏を乗り切るためには、断熱に加え、「遮熱」の概念が不可欠です。遮熱とは、屋根や外壁から侵入する日射熱(輻射熱)を反射して熱の侵入を防ぐことです。高い断熱材を使用していても、屋根からの熱の侵入を防げなければ、冷房負荷は増大します。遮熱シートの採用や、窓への高性能なLow-Eガラス(遮熱タイプ)の使用、深い軒や庇の設置など、日射熱を家に入れる前の対策をセットで行うことが、熊本での快適な暮らしに直結します。
高い断熱性能を持つ家は、外気温の影響を受けにくく、冷暖房の効率を格段に上げてくれることから、結果的に光熱費の削減にも貢献します。
2.断熱材の主要な種類と特徴

断熱材は、大きく分けて「繊維系」「発泡プラスチック系」「自然素材系」の3種類があります。
2-1.繊維系断熱材
グラスウール(GW)
特徴:ガラスを繊維状にしたもので、最も普及している断熱材の一つです。コストパフォーマンスに優れ、不燃性や吸音性もあります。
注意点:湿気に弱く、施工時に隙間ができると性能が低下するため、高い気密性(C値)を確保する丁寧な施工がとても重要になります。
ロックウール(RW)
特徴:玄武岩などの鉱物を繊維状にしたもので、グラスウールと同様に不燃性・吸音性に優れています。
2-2. 発泡プラスチック系断熱材
ウレタンフォーム(硬質・軟質)
特徴:現場で吹き付けて発泡させるタイプ(吹付ウレタン)が多く、隙間なく施工できるため、高い気密性を確保しやすいのが最大のメリットです。
注意点:繊維系に比べて高価になりがちですが、その分、断熱性能が高く、複雑な形状の場所にも適用しやすいです。
ポリスチレンフォーム(EPS/XPS)
特徴:板状の断熱材で、押出法ポリスチレンフォーム(XPS)は水に強く、透湿抵抗も高いため、床下や屋根の断熱にも適しています。
目標とするUA値を達成するために、これらの特徴を比較して最適な断熱材を選びましょう。
2-3.自然素材系断熱材
特徴:板状の断熱材で、押出法ポリスチレンフォーム(XPS)は水に強く、透湿抵抗も高いため、床下や屋根の断熱にも適しています。
セルロースファイバー(CF)
特徴:新聞紙などの古紙をリサイクルしたもので、環境に優しい断熱材です。高い断熱性だけでなく、調湿性、吸音性、防虫性にも優れています。
注意点:専門の施工業者が必要で、他の断熱材よりコストが高くなる傾向があります。
3.断熱材の選び方のポイント
最適な断熱材を選ぶためには、次のような要素を総合的に考慮することが重要です。
①断熱性能(熱伝導率):熱の伝えやすさを示す数値で、小さいほど高性能です。必要な断熱性能(UA値)を満たすために、断熱材の種類や厚みが決まります。
②施工性(気密性):どんなに高性能な断熱材でも、施工に隙間があると熱は逃げてしまいます。特に繊維系を選ぶ場合は、気密性を確保できる丁寧な施工が最も重要です。
③コスト:初期費用を抑えたい場合はグラスウール、高性能や気密性を重視する場合は吹付ウレタンフォームやセルロースファイバーなど、予算と性能のバランスを検討します。
④その他の機能:熊本のように降水量が多い地域では、断熱材自体の吸湿性や、壁内での結露リスクを考慮し、透湿・防水の計画も重要になります。また、遮音性や防虫性を重視する場合は、セルロースファイバーなどが選択肢に入ります。
経済産業省 硬質ウレタンフォームの熱伝導率など断熱材の性能に関する資料
主要な断熱材の熱伝導率のデータなど(経済産業省資源エネルギー庁)
4.UA値とは?熊本市周辺の地域区分とUA値の基準(地域区分6)
UA値(ユーエーち:外皮平均熱貫流率)とは、住宅がどれだけ「熱を逃がしにくいか」を示す成績表のようなものです。
この数値は、家全体の壁、屋根、床、窓などの表面積を考慮して計算されます。人に例えるなら、家の「厚着の度合い」を測るものだと考えてください。
UA値が小さい:家が分厚いコートを着ている状態。外の暑さや寒さが室内に伝わりにくく、室内の快適な温度が外に逃げません。つまり、断熱性能が高いことを意味します。
UA値が大きい:家が薄着の状態。熱の出入りが多く、冷暖房を効率よく効かせることが難しくなります。
熊本市周辺の地域区分とUA値の基準
日本は気候の差によって8つの地域に分けられており、熊本市周辺の多くの地域は、温暖な気候の区分である「地域区分6」に該当します。この地域区分に基づき、国が定める断熱性能の目標値があります。
| 断熱等級 | 性能レベル | 地域区分6のUA値基準 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 等級4 | 平成28年省エネ基準 | 0.87以下 | 2025年に義務化される最低ライン |
| 等級5 | ZEH水準 | 0.6以下 | 快適性と省エネ性の目安となる水準 |
| 等級6 | HEAT20 G2相当 | 0.46以下 | より高い省エネ性と快適性を目指す水準 |
温暖地域である熊本でも、夏は厳しく、冬は冷え込みます。そのため、最低でも等級5(0.6以下)、さらに快適な暮らしや光熱費の削減を目指すなら、等級6(0.46以下)の達成が強く推奨されます。この目標を達成するには、高性能な断熱材と、特に熱が逃げやすい窓の性能を高めることが大切なポイントとなります。
まとめ~快適な住まいを実現するために~
断熱材は、UA値という数値だけでなく、気密性(C値)や日射遮蔽(ηAC値)といった他の要素と合わせて、家全体の設計として考えることが大切です。
・断熱材の種類と厚み:UA値の目標に合わせて選定し、特に熱が逃げやすい窓などの開口部の性能も高める必要があります。
・気密性(C値):断熱材の性能を最大限に引き出すため、どれだけ隙間なく施工されているかを示す「C値」も重要です。一般的に1.0以下が推奨されます。
断熱と気密はセットで考えよう
断熱材を厚く入れてUA値を良くしても、C値(隙間相当面積)が悪ければ、壁や床の隙間から暖められた空気や冷やされた空気が逃げ、計画通りに性能は発揮されません。これは、性能の良い水筒に穴が開いているのと同じです。
熊本市周辺でZEH水準(UA値0.6以下)を目指すなら、C値は 1.0㎠/㎡以下を目標とし、できることなら 0.5㎠/㎡ 以下を目指しましょう。C値を測定するためには、専門の測定業者による「気密測定」が必要です。特に高断熱で高気密仕様の施工に慣れた工務店を選ぶことで、高性能な断熱材の効果を最大限に引き出すことができます。
加えて、気密性は単なる性能指標にとどまらず、住む人の健康や快適さ、さらには光熱費の節約にもつながる重要な要素です。家の性能が安定していれば、エアコンの効きも良く、夏は涼しく冬は暖かく過ごせます。結果的に家族の暮らし全体が向上します。
これまで見てきたように、熊本の厳しい夏と冬を快適に過ごす注文住宅を建てるためには、断熱材の選択だけでなく、UA値とC値の両方を考慮した設計を行い、それを実現できる施工品質の高い工務店・ハウスメーカーを選ぶことがとても大切です。
万代ホームには、たくさんの高気密・高断熱の注文住宅を建ててきた実績があります。これから注文住宅を建てたいけれど、気密性や断熱性能のことが気になるという方は、ぜひお気軽にご相談ください。