目次
はじめに
「せっかく熊本で注文住宅を建てるなら、憧れの平屋にしたい。でも、市内の土地は高いし、水害も心配…。やっぱり現実的なのは二階建て?」
今、熊本市周辺で家づくりを始めようとしている方の中には、この「平屋か二階建てか」という選択に迷っている人もいらっしゃるのではないでしょうか。TSMCの進出による地価の高騰、熊本地震を経て高まった平屋人気、そして近年の記録的な豪雨災害や厳しい夏の暑さ。熊本での家づくりを取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化しています。
本コラムでは、熊本市周辺の最新の土地事情やハザードマップ、さらには「肥後の夕凪」とも称される特有の気候リスクまでを分析。平屋・二階建てそれぞれのメリット・デメリットを整理し、将来「この家にしてよかった」と思えるための判断基準について分かりやすく解説していきます。
1.熊本の最新住宅事情:平屋人気の背景と土地相場
現在、熊本県内では新築戸建ての約3割〜4割近くが平屋を選んでいるというデータもあり、全国平均を大きく上回る平屋人気です。これには熊本特有の事情がいくつか重なっています。
第一に、「熊本地震の教訓」です。2016年の地震以降、構造的に安定しており、重心が低いため揺れに強いとされる平屋の安心感が再評価されました。 第二に、「ライフスタイルの変化」です。かつては「二階建てが当たり前」でしたが、現在は「老後の使い勝手」を重視し、最初から階段のない生活を選ぶ30代・40代の現役世代が増えています。 第三に、「半導体バブルによる土地活用の変化」です。熊本市周辺では地価が高騰しており、土地をどう活用するかが以前よりもシビアに問われるようになっています。
平屋のメリット・デメリット:バリアフリーとコストのバランス

メリット ~階段のない開放感と将来の安心~
平屋の最大の魅力は、すべての生活がワンフロアで完結する「水平移動」の快適さにあります。
家事動線の効率化:
洗濯機から物干し場へ、あるいはキッチンからゴミ出しへ。重い荷物を持って階段を上がる必要がなく、日々の家事負担が大幅に軽減されます。
家族のコミュニケーション:
廊下を極力減らし、リビングを中心に各個室を配置する設計が多いため、家族の気配を常に感じることができます。
メンテナンス性の高さ:
外壁や屋根の点検・修繕の際、高い足場を組む必要が二階建てより少なく済むため、将来のメンテナンス費用を抑えやすい傾向にあります。
構造的な安定:
上階の重みがないため、地震の揺れに対して有利な構造を造りやすく、大開口の窓を設けても耐震性を維持しやすいのが特徴です。
デメリット ~コストと防犯、プライバシーの確保~
一方で、平屋ならではの難しさも存在します。
建築コスト(坪単価)が上がる:
坪単価が高くなりやすい。基礎や屋根の面積が広くなることに加え、熊本の厳しい夏を凌ぐための高度な屋根断熱・遮熱対策が必要になるため、 二階建てに比べて初期投資額が膨らむ傾向があります。
広い土地の必要性:
駐車場や庭を確保しつつ平屋を建てるには、相応の土地面積が必要です。熊本市内の人気エリアでは、建ぺい率の制限もあり、中には平屋を断念せざるを得ないケースもあります。
防犯面とプライバシー:
すべての部屋が地面に近い位置にあるため、外からの視線や侵入に対する配慮が欠かせません。高いフェンスや目隠し、防犯ガラスなどの追加対策が必要になります。
3. 二階建てのメリット・デメリット:都市部での合理的な選択と防災
メリット ~土地の有効活用と「垂直避難」という安心~
二階建ては、日本の都市部において最も合理的な建築形態です。
土地コストを抑えられる
小さな土地でも、上に伸ばすことで十分な延床面積を確保できます。熊本市中央区や東区、地価が高騰している菊陽町などでは、土地代を抑えるための現実的な選択肢です。
プライバシーの分離
1階をLDKの共有スペース、2階を寝室や子供部屋といったプライベートスペースと明確に分けることができます。「家族の間でも適度な距離感が欲しい」という方に適しています。
日当たりと眺望
周囲が住宅に囲まれていても、2階であれば日照を確保しやすく、バルコニーからの眺望も楽しめます。
水害リスクへの対応
近年、豪雨災害が頻発する中で、「垂直避難」ができることは大きなメリットです。万が一の浸水時、2階に避難場所があることは平屋にはない安心感です。
デメリット ~将来の「使わない部屋」リスク~
階段の負担
若いうちは気になりませんが、怪我をした際や高齢になった際、2階への移動が困難になります。
上下階の音問題
2階の足音が1階に響く、あるいは1階のテレビの音が2階に伝わるといった、音に関するストレスが生じやすい側面があります。
上下階の温度差
階段の負担や音問題に加え、「1階と2階の温度差」も課題です。 夏場、2階の寝室に熱がこもりやすく、冷房効率が悪くなる傾向があるため、全館空調の検討や、断熱性能の等級を一段階上げるなどの対策が求められます。
4. 熊本市周辺での選び方:地価・防災・気候から考える
熊本市周辺でどちらを選ぶべきかは、単なる好みの問題ではなく、土地の資産性と地域の気候リスクを掛け合わせて判断する必要があります。
① エリア別の土地活用戦略
市街地(中央区・東区・南区など): 坪単価が30万円〜60万円を超えるエリアでは、平屋を建てようとすると土地代だけで予算の大半を占めてしまいます。そういった場合は「二階建て」を採用し、浮いた予算を住宅設備のグレードアップや断熱性能に回すのもおすすめです。
郊外・新興エリア(合志市・菊陽町・益城町など)
TSMC進出の影響で地価は上昇していますが、依然として50〜70坪の分譲地が確保しやすいエリアです。将来の売却まで見据えるなら、現在需要が急増している「平屋」を選択することで、将来的な資産価値を維持しやすくなります。
② 熊本特有の「夏の酷暑」への対策
熊本は「肥後の夕凪」と呼ばれるほど、夏の蒸し暑さが厳しい地域です。この気候が構造選びにも影響します。
平屋の場合
屋根面積が広いため、屋根からの輻射熱がダイレクトに室内に伝わりやすい傾向があります。屋根断熱の強化や、遮熱パネルの導入が重要です。
二階建ての場合
1階は2階部分が影になるため涼しく過ごせますが、2階の個室は熱がこもりやすくなります。夜間の快適性を確保するため、風の通り道(通風計画)を綿密に練る必要があります。
③ ハザードマップと「垂直避難」
白川や坪井川、緑川流域などの浸水想定区域では、平屋は全ての家財が水に浸かるリスクを伴います。特に浸水深が1メートルを超えるようなエリアであれば、「二階建て」を選択し、2階に寝室や重要書類の保管場所を設ける「垂直避難」の考え方が、家族の命と財産を守る上で非常に大切です。また、避難時の動線や非常用品の備蓄場所も含めて、日頃から防災意識を高めておくことが求められます。
出典:気象庁熊本市の平均気温と気候データ
出典:熊本市ハザードマップ(洪水・土砂災害など)
まとめ
平屋にするか二階建てにするか――家づくりを考えるうえで多くの方が直面する悩みですが、どちらが「正解」というわけではありません。それぞれに魅力があり、住む地域やご家族のライフスタイルによって向き・不向きが異なります。熊本という土地で家を建てる場合、「土地の価格」「防災リスク」「夏の暑さへの備え」という3つの視点から考えることが大切です。
たとえば、中心部など土地が高価な場所では二階建てにして空間を有効活用するのが理にかなっています。一方で、郊外など比較的広い土地が確保できる場所では、ワンフロアで完結する平屋の暮らしも魅力的です。
防災面では、地震に強い構造を持つ平屋、水害時に避難しやすい二階建て、それぞれに備えがあります。また、熊本の厳しい夏を考えると、断熱性や通風性など、どのように快適さを保つかも大きなポイントになります。
何より大切なのは、将来の自分たちがその家で快適に過ごしている姿をイメージすること。夏も冬も笑顔で暮らしている未来の自分たちを思い描くことから、理想の住まいづくりは始まります。
万代ホームでは、これまでに多くの平屋・二階建て住宅を熊本で手がけてきた実績があります。補助金の活用など、家づくりに関するさまざまなサポートも行っておりますので、どちらにするか迷っている方、場所選びから悩んでいる方も、ぜひお気軽にご相談ください。